雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

社会で生きている姿を想像する

3学期に入って、ジャム学級の子どもたちは、帰りの会を交流学級で行うようにしました。

今までジャム学級でやっていた「帰りの会」とは、学校を出る前に、やっておかないといけないことを自分たちで考えて、それを10分以内に全員で終わらせるという活動でした。つまり、一学期の初めから、ジャム学級の子どもたちは、帰りの用意や明日の学習計画、教室の整理などを自分たちで考えて6人全員の力で出来るように活動していたのです。

はじめは、何をしないといけないかを子どもたちが黒板に書き出していました。そのうち、黒板に書き出さなくても、子どもたちが自分で状況を見ながら声かけをし、分担して終わらせるようになりました。2学期になると、

「時間割や帰りの用意など自分のことは自分でやって、教室の整理は、みんなでやろう」

というように、何でも手伝うのではなく、一人一人の成長を考えて手伝うかどうかをそれぞれが判断するようになってきました。この頃の帰りの会では、
「これ、やっといて!」
「それは、自分でせんといかんよ」
というやり取りがありつつ、状況をみて、どうしてもできなさそうだったら、こっそり手伝う、というような姿が見られるようになりました。

そして、3学期。私は、帰りの会でタイマーを使うのをやめました。ところが、子どもたちは、タイマーがなくても、10分でやることを全て終わらせるのです。自分のことが終わっても、教室を見渡して、
「○○が終わっとらんよー」
と声をかけ合っていました。もちろん人間がやっている以上、調子が悪いときもあります。毎日完璧に出来るわけではありません。しかし、私は、帰りの会では、別の集団で人とかかわる時間にしたいと考えるようになりました。

だからといって、これがゴールにはなりません。子どもたちが将来、社会に出たときのことを考えます。別の環境になっても、できるようになって欲しいと思っています。たとえ、ジャム学級の教室でなくても、6人でなくても、ジャムがそばにいなくても・・・。

交流学級の帰りの会に参加するだけじゃないか?と思われるかも知れません。しかし、帰りの用意を交流学級でする、ということは、ランドセルをはじめ、学習用具、時間割ボードなどを全て交流学級に置くことになります。一日の流れが変わります。そこで、たくさんの先生方に相談し、お願いをして、荷物の場所や道具、安全面など検討し、帰りの会を交流学級で受けられるように準備を進めました。また、子どもたちには、今までと動きが変わることを説明し、見通しがもてるようにジャム学級で練習をしました。

さて、木曜日。学習用具を交流学級に移動しました。場所が変わったため、ジャム学級での学習時に「筆箱を交流学級に置いてきた!」ということがありましたが、その都度、どうすればよいかを考えて、行動できるように支援しました。そして、帰りの会・・・。子どもたちは、ジャム学級でやっていたときと同じ様に、自分たちで帰りの用意をし、翌日の時間割を確認していました。分からないことは、交流の友達や先生に聞いていました。とても素晴らしい時間でした。

 

20年後、彼らが社会で生きている姿を想像すると、人に尋ねる力が必要です。しかし、彼らはそれが苦手です。だから、その力をつけてもらいたい。そう思っています。