雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

汎用的能力を高めよう

私は、少し前から彼女のことが気になっていました。勉強が分からないのではありません。態度が悪いわけでもないし、給食もよく食べます。では、何が気になっていたか。それは、「人とのかかわり」です。といっても、友だちとトラブルを起こしているのではないのです。彼女は、これまで『学び合い』中は、積極的に動いて分からない子の側に行き、教えていたのですが、最近、一人で黙々と勉強するようになりました。『学び合い』は、目標を達成するために、必要だと思う方法を考えて勉強します。なので、一人で勉強するのもOKです。しかし、彼女の人とのかかわり方が変わったので気になりました。私は(何か理由があるんだろうな)と思い、しばらく様子を見ていました。今週の算数でのこと。この日、彼女は授業が始まって間もなくすると、分からない友だちの側に行き、棒グラフの説明をし始めました。久しぶりにこのような姿を見たので、授業後に気になって聞いてみました。ジャム「ねえ、今日はどうしてすぐに教えに行ったの?」
女の子「え?今日はすぐに分かったから・・・。」
ジャム「でも、最近一人ですっと勉強してたよね。」
女の子「自分がちゃんと分かってから、教えようと思ったんです。

彼女は、算数が分からない友だちに、分かる説明ができるようになることを「ちゃんと分かった」と捉えていたのです。

次に、ある男の子です。
彼もまた、『学び合い』では、分からない友だちとたくさんかかわって、教えていました。これまでも「分からない」と言う友だちや、やる気の無い友だちを何度も助けてきました。彼の時間の使い方は2通りあります。一つは、自分が問題を早く解いて、残りの時間を分からない友だちに説明する。もう一つは、自分が解くのを後回しにして、先に友だちを分かるようにする。今週の国語でのこと。報告書の書き方が分からずに固まってしまった友だちを、彼は見逃しませんでした。何とか励まして書いてもらおうとしていたのですが、顔を上げてくれません。このまま放っておけば、その友だちは何もしないまま終わるかもしれない、かといってずっと付き合っていたら自分も書けない・・・。そこで、彼は考えました。自分の机をその友だちの隣に移動したのです。そして、友だちを励ましながら、自分の報告書を書き始めました。すると、うつ伏せになっていた友だちも書き始めました。彼は、自分の時間も友だちの時間も大切であることを態度で示したのです。

最後に、別の女の子の話です。
彼女に驚いたのは、今週の国語の時間です。前の時間までに、報告書の構成や書き方の学習をしていました。この時間から、6時間かけて報告書を書き上げるのですが、彼女は、まだ始めて間もないのに、どんどん先に書き進んでいました。
ジャム「え!もうこんなに進んだの? 早いねえ。」
女の子「だって、昨日の(板書)を全部メモしといたもん。」
私が驚いたのは、彼女は目的意識を持って、ノートに書いていたことです。というのも、私は、新しい学習を始めるときは、その学習の目標と学習の計画を示します。今回は、報告書の構成と内容の学習をして、報告書を書く学習をすると伝えていました。つまり、彼女は、単元後半の報告書を書くときの参考になるように、ノートに大切なことをまとめて書いていたわけです。板書は、ノートに書き「写す」って言いませんか?彼女は、後でノートが役に立つように、ノートに書き「記し」ていたのです。そして、そのノートを友だちと一緒に見ながら報告書を書いていました。

昨年から、文部科学省中央教育審議会で、「アクティブ・ラーニング」について話し合われており話題になっています。文部科学省によると、アクティブ・ラーニングでは、「学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。」となっています。今日登場した3人は、『学び合い』によって、汎用的能力を高めようとしているのかもしれません。