雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

「何に困っているのか」と考える

木曜日の昼休み。体育委員会主催のドッジボール大会が行われました。先週,ドッジボール大会について子ども達に話しました。大会に向けて,クラスの目標は,シンプルに「勝つ」になりました。そのために,ボールを取る練習やよける練習,投げる練習など,それぞれが試合に勝つためにできることを昼休みに行いました。
 みんなが練習する中,浮かない顔をしている子がいました。その子は,「ドッジボール大会に出ない」と言うのです。練習には顔を出すものの,大会の直前まで,「出ない」と宣言していました。
「何で出んと?」
「練習すれば良いやん」
みんなは,その子が単にドッジボールが苦手でやりたくないんだと思っているようでした。だから,やろう,練習しようとみんなが声をかけていたのです。しかし,そんな中,ある子がみんなに向かって半ばあきれ顔で言い放ちました。
「そうじゃないんだよ!〇〇さんは,ドッジボールが嫌いなんじゃないんだよ。ドッジボールで嫌なことをされたり,それを見たりするのが嫌なんだよ!」
(そんなことも分かんないの?)というような顔です。教室が一瞬シーンとなりました。子ども達は,それがどういう意味なのか分からないようでした。しかし,少しずつ,どういうこと?と聞いていくうちに,昼休みにドッジボールをすると,外野でボールの取り合いになったり,何か言われたりするのが楽しくないという経験をしていることが分かってきました。すると,
「無理に出なくていいから,試合で応援してよ!」
「応援してもいいんだよ。それでもみんなでやったことになる。」
という子があらわれました。ドッジボール大会は強制ではなく自由参加です。
(困っている子に寄り添った意見が出てきたな。)
私は,思いました。
「んー,じゃあそうしようかな・・・。」
ここが,この話し合いのゴールだと思いました。ところが・・・。
「試合やけん,たぶんだれも嫌なことする人いないと思うよ。」
「じゃあ,1セット目は応援して,2セット目は出てみたら?」
なんと,子ども達はそれでも食い下がって話しを続けているのです。そして,勇気づけようと粘り強く話しかけていました。
「だって・・・おれ,取るのも,投げるのもへたくそやし・・・。」
「そんなことないよ!」
「だれも〇〇のせいにしないよ!」
「しない,しない!」
そして,その子が,一歩踏み出しました。
「じゃあ,1セット目は応援して,嫌なことが起こらなかったら,2セット目に出るでいい?」
「うん!いいよ!」
――そして,ドッジボール大会2セット目。
円陣を組んで,みんなで大きな声を出し気合いを入れました。
その子は,コートに立っていました。
ボールが飛んで来て,それを取ると,
「いけー!」
「投げろー!」
大きく振りかぶって投げた球は,大きく弧を描いて外野に届きました。
「すげぇ」
「投げれるやん!」
子ども達の力は本当に素晴らしいです。子ども達同士のかかわりで解決していく姿を2学期,特に11月以降何度も見てきました。もちろんその背景には揉め事があるんですが・・・。しかし,それによって,解決の仕方が上手になり,子ども達はどんどん成長してきたのです。何より,上手になったのは,「何でイライラいしているのか」「何に困っているのか」という相手のことを考えて寄り添って話すようになってきたことです。2学期ものこり僅かですが,子ども達はまだまだ伸びていくと思います。