雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

卒業式、そして旅立ち。

 

バナくん、イチくんの卒業式。

バナくんが来ました!
学校に来たのは、本当に久しぶりでした。
職員室の周りには、バナくんに会いに、友達がやって来ていました。

懐かしいのも束の間、バナくんと私は、急いで式場に向かいました。
バナくんは、卒業式の練習をしていないのです。
開場するまえの式場で、二人で少し練習しました。
座る位置
歩くルート
卒業証書授与の動き
送辞の台詞
とは言っても、短時間でたくさんのことを覚えられません。式に参加するのに最低限必要なことの確認をバナくんとしました。
しばらくすると、交流学級の先生方が来られ、練習を手伝ってくれました。

 

そして、開場の時間

バナくんは、交流学級へ向かいました。

「おおー久しぶり!」
バナくんは、交流学級の子供達に、暖かく迎え入れてもらっていました。あとは、バナくんと交流学級の子供達の力を信じるのみです。

ジャム「別れの言葉の台詞、どうする?」
バナ「うーん・・・、友達と一緒に言う」
ジャム「わかった。じゃあそのことを友達に話しておいてね。」

バナくんが自分で出した答えに異論などあるわけありません。
ただ、友達にお願いするのは、バナくん自身です。そのことを伝えて私は、入場の位置に並びました。

 

前日の語り

前日、最後の卒業式の練習の最後に、私は卒業生のみんなに語る機会を頂きました。私は、卒業式の日について語りました。

「みなさん、明日はいよいよ卒業式ですね。
明日、もしかしたら緊張して、台詞を忘れたり、間違えたり、
言うのを忘れたり、大きい声で言えなかったり、困ったことになるかも知れません。

もし、式の途中で、何て言うか分からなくなった友達がいたとしたらどうしますか。

あなたたちは、これまでの練習で、静かにしなさい、姿勢良く座りなさい、大きな声で言いなさい、など卒業式の態度について教わってきました。しかし、困った人が目の前にいるのに、姿勢良く、静かに座っていることは、正しいのでしょうか。

私は、それは違うと思います。
もし、明日、卒業式の最中に困った人がいたら、助ければいいと思うのです。決まりを守ることは大事です。しかし、守ればいいわけではない。その先があるんです。それに気付いて行動できた時、みなさんは、〇〇先生や△△先生の教えを越えたのだと思います。

そして、今の6年生ならそれができる。私はそう思っています。」

 

入場直前、卒業生が音楽室に集合し、担任の先生方の最後の言葉がありました。そして、
「ジャム先生もお願いします」
と言われました。
ジャム「みなさん、昨日の話、覚えてる?」
卒業生「うん」
ジャム「それなら、もういいです。」

 

卒業式で、子供達が行動を起こす

開式の言葉のあとに、国歌斉唱があります。

バナくん、イチくんへの思いがこみ上げ、
既に、この時点で涙が出ていました。

卒業証書授与。

イチくんは、一番だったのですが、緊張することなく、練習通り、しっかり受け取って、席に戻りました。

バナくんの番です。
朝、一、二回やっただけだったのですが、ちゃんと順番通りに立ち上がり、もらうことができました。歩く練習などしていないのに、堂々たる歩きっぷり。前後の友達が困ったらフォローしようとしていたのですが、全然フォローはいりませんでした。

そして、別れの言葉。

イチくんは、助詞を飛ばしがちなのですが、本番は、見事、正確に大きな声で言うことが出来ました!

バナくんの台詞の順番が近くなってきました。
すると、周りの友達がバナくんに、小さく声をかけたり、合図をしていました。バナくんが小さく頷きます。

そして、バナくんの台詞。
大きな声で、言ったのは・・・なんとバナくん一人。
なんと、周りの友達は、「ちゃんと言えてるから、大丈夫」と言って、一人で言うことを勧めていたのです。バナくんは、友達から勇気をもらい、一人で言うことが出来ました。

その様子を見て、私の目から大粒の涙が落ち、止まらなくなりました。

殆ど知らない別れの歌も、なんとか一緒に歌おうと口を開け、
全員で言うところも、友達と目配せしながらなんとか合わせて言っていました。子供達の力に本当に驚きました。

 

バナくんの決断

バナくんは小学校最後の日をジャム学級のみんな、そして交流学級の友達と過ごすことが出来ました。イチくんは、バナくんが、同じ中学校に行かないことを知り、とても残念そうでした。

バナくんにはバナくんの人生があります。バナくんはそれを自分で決断したのです。私は、バナくんの決断を信じます。バナくんも、イチくんも、これから人生が幸せなものになることを期待しています。