雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

一人も見捨てない覚悟(後編)

一人も捨てない覚悟(3/14)

の続きです。

 

 

放課後、イチくんにみんなで謝るために、翌朝早く集合することに決めたレモくん、リンくん、モモさん、ブドーくんの4人。

 

次の日の朝。

一番に来たのは、なんとブドーくんでした。

なんだかんだ言って、一番責任を感じていたんですね。

次に来たのは、モモさん。モモさんはいつも通りにやって来ました。
いつも通りが早いのですから。


2人は、早く来たものの、席に座って押し黙ったまま。
どうやって謝ろうか、考えているのでしょう。

 

しかし、レモくんとリンくんが来ない。
嫌な予感がしました。

 

約束していたのに・・・

そうこうしていると、イチくんがやって来ました。

イチ「おはようございまーす!」

イチくんは、昨日のことなど忘れてしまったかのように元気でした。
逆に、席に黙って座っているブドーくんとモモさんを見て、

イチ(一体どうしたの?)

といった顔をしています。
2人は、「4人で謝る」約束をしていたのに、残り2人が来ないし、イチくんは来てしまうし、どうしていいか分からなくなりました。

3人の微妙な空気の中、朝の時間は過ぎていき、開始5分前のチャイムが鳴ってしまいました。このままでは、交流学級の朝の会に遅れてしまう。イチくんは急いで交流学級に行きました。

 

今日の一時間目は体育。
この日は、イチくんが小学校最後の体育になる日です。
なので、イチくんがしたい競技をみんなですることになっていました。

(一時間目までに解決しなきゃ)

ブドーくんとモモさんは、それが分かっていました。

 

しかし、二人は来ません。

仕方なく、二人は、交流学級に行くことにしました。

 

完全に忘れていた二人

それから五分後。


リン「おはようございます」
リンくんが、やって来ました。
ジャム「リンくん、一体どうするの?」
リン「え?なに?」

リンくんは完全に忘れていました。

誰もいなくなった教室で、イチくんのことと、一時間目のこと、レモくんが来ていないことを話しました。

リン(しまった・・・)

リンくんは思い出して、慌てました。
ジャム「どうすればいいか、考えておいて。」
私は、体育の用意があるので、運動場に向かいました。


職員室に向かう途中の廊下でイチくん、ブドーくんの二人とすれ違いました。
あれ?なんで二人一緒なんだ??

イチくんは笑顔です。
しかし、ブドーくんの表情は硬い。

あの様子では、まだなにも進展していないのだろう。
まあ、いいか。あとは任せよう。

教室に向かう二人を尻目に、私は、そのまま運動場に向かいました。

運動場に出てみると、はるか向こうの方に、レモくんの姿を認めました。

ジャム「おーい、レモくーん!」

手招きをすると、レモくんは「あっ!」という表情をして、走ってやって来ました。レモくんも忘れていたのです。レモくんは、急いで教室の方に向かいました。

(モモさんも教室に戻っているだろう。これで5人が揃った。あとは、子どもたちを信じよう。)

 

教室にいる五人を信じる

昨日も、だんまりになったブドーくんをそのままにしなかったレモくん、リンくん、モモさん。きっとみんなでで解決する。そう思って、私は運動場に一人残りました。

それから、5分後。

ブドー「せんせー、みんなで謝りました。」

ブドーくんを先頭に、5人が一緒に走ってきた。

ジャム「そうか、みんなで解決出来たんだね。よかった、よかった。」

5人の顔はみんな晴れやかでした。

昨日は、レモくん、リンくんが、解決のきっかけを作りました。
今日は、ブドーくん、モモさんがきっかけを作ったのでしょう。

 

一人一人が考え、行動する

ジャム学級は、誰か一人がリーダーになるのではなく、その時に、一人一人が考えて動く。喧嘩もあるけど、みんなで解決出来る。子どもたちの力は本当に凄い。

運動場にみんなが揃うと、イチくんが大きな声で言った。

イチ「じゃあ、今日は、ティーボールをします。みなさんやりましょう!」

 

イチくんの小学校最後の体育は、とても楽しい時間となりました。