一人も見捨てない覚悟(後編)
の続きです。
次の日の朝。
一番に来たのは、なんとブドーくんでした。
なんだかんだ言って、一番責任を感じていたんですね。
次に来たのは、モモさん。モモさんはいつも通りにやって来ました。
いつも通りが早いのですから。
2人は、早く来たものの、席に座って押し黙ったまま。
どうやって謝ろうか、考えているのでしょう。
しかし、レモくんとリンくんが来ない。
嫌な予感がしました。
約束していたのに・・・
そうこうしていると、イチくんがやって来ました。
イチ「おはようございまーす!」
イチくんは、昨日のことなど忘れてしまったかのように元気でした。
逆に、席に黙って座っているブドーくんとモモさんを見て、
イチ(一体どうしたの?)
といった顔をしています。
2人は、「4人で謝る」約束をしていたのに、残り2人が来ないし、イチくんは来てしまうし、どうしていいか分からなくなりました。
3人の微妙な空気の中、朝の時間は過ぎていき、開始5分前のチャイムが鳴ってしまいました。このままでは、交流学級の朝の会に遅れてしまう。イチくんは急いで交流学級に行きました。
今日の一時間目は体育。
この日は、イチくんが小学校最後の体育になる日です。
なので、イチくんがしたい競技をみんなですることになっていました。
(一時間目までに解決しなきゃ)
ブドーくんとモモさんは、それが分かっていました。
しかし、二人は来ません。
仕方なく、二人は、交流学級に行くことにしました。
完全に忘れていた二人
それから五分後。
リン「おはようございます」
リンくんが、やって来ました。
ジャム「リンくん、一体どうするの?」
リン「え?なに?」
リンくんは完全に忘れていました。
誰もいなくなった教室で、イチくんのことと、一時間目のこと、レモくんが来ていないことを話しました。
リン(しまった・・・)
リンくんは思い出して、慌てました。
ジャム「どうすればいいか、考えておいて。」
私は、体育の用意があるので、運動場に向かいました。
職員室に向かう途中の廊下でイチくん、ブドーくんの二人とすれ違いました。
あれ?なんで二人一緒なんだ??
イチくんは笑顔です。
しかし、ブドーくんの表情は硬い。
あの様子では、まだなにも進展していないのだろう。
まあ、いいか。あとは任せよう。
教室に向かう二人を尻目に、私は、そのまま運動場に向かいました。
運動場に出てみると、はるか向こうの方に、レモくんの姿を認めました。
ジャム「おーい、レモくーん!」
手招きをすると、レモくんは「あっ!」という表情をして、走ってやって来ました。レモくんも忘れていたのです。レモくんは、急いで教室の方に向かいました。
(モモさんも教室に戻っているだろう。これで5人が揃った。あとは、子どもたちを信じよう。)
教室にいる五人を信じる
昨日も、だんまりになったブドーくんをそのままにしなかったレモくん、リンくん、モモさん。きっとみんなでで解決する。そう思って、私は運動場に一人残りました。
それから、5分後。
ブドー「せんせー、みんなで謝りました。」
ブドーくんを先頭に、5人が一緒に走ってきた。
ジャム「そうか、みんなで解決出来たんだね。よかった、よかった。」
5人の顔はみんな晴れやかでした。
昨日は、レモくん、リンくんが、解決のきっかけを作りました。
今日は、ブドーくん、モモさんがきっかけを作ったのでしょう。
一人一人が考え、行動する
ジャム学級は、誰か一人がリーダーになるのではなく、その時に、一人一人が考えて動く。喧嘩もあるけど、みんなで解決出来る。子どもたちの力は本当に凄い。
運動場にみんなが揃うと、イチくんが大きな声で言った。
イチ「じゃあ、今日は、ティーボールをします。みなさんやりましょう!」
イチくんの小学校最後の体育は、とても楽しい時間となりました。