雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

何事も起こらないってことが、素晴らしいと思える

 大根の収穫をしようとしたのだが・・・

明日、支援学級のみんなでおでんを作るので、大根の収穫のため、畑に行くことに。

低学年の子達は抜くのが楽しみで、大根を前にして、今にも抜きそうな勢いで座している。

大根の畝を見ると、大きい大根が八株あった。人数は11人。一人一本は、抜けない。

低学年クラスの先生が言った。

「11人いるので、一人一本は抜けませんね。どうしたら良いでしょうか。みんなで考えましょう。」

「俺、絶対にこれやけんね!!!」

低学年の子は、大きい大根の前から動きそうに無い。

ジャム学級の子達が、「うーん」と考えていた。すると、

レモ「リン、一緒に抜こうぜ・・・」

リン「よく見ると、小さいのがある!」

葉っぱに隠れていて見えなかったが、小さい株が3つあった。これで、11株になる。

レモ「えーっとねー、そしたらねー・・・。」

みんなが、レモくんの言葉に耳を傾けた。

レモ「ジャム学級が、まず小さいのを抜いて、そして、残りのクラスが大きいのを抜く。」

「えっっ!あぁー。」

低学年の子は、レモくん達が「大きいのを抜く」と言うと思ったのか、すかさず反対しようとして、口ごもった。

ブドー「いいよ。」

モモ「うん。」

リン「それでいい。」

イチ「そりゃ、そうやろ。」

低学年の先生は、この反応に「成長したわねぇ、すごいね~」と、感心した。

「じゃあ、さっさと抜くよ。」

ジャム学級の5人大根を選んで、サッと引き抜く。

小さくても収穫できたことが嬉しかったようで、みんなで見せ合っていた。

それを見て、中学年クラスの子と低学年クラスの子が一人ずつ抜き始めた。

そして、全員が大根を収穫できました。

 

いたって普通の話のようだが・・・

これだけ書くと、特に何もない話のように感じると思いますが、これ、凄いことなんです。何がって言うと・・・

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大根の収穫のような活動では、自分の好きな株を抜きたい(特に大きいもの)と思うものです。それが、

抜きたいと思う株が他人とかぶる→(低学年に抜いてもらおう、抜きたがっている子に抜いてもらおう)
全員が抜けない→(全員が抜くことができないかなあ)
小さい株を3つ発見→(ジャム学級で小さいのを抜こう)
ジャム学級は5人→(2人は大きいのになるが、気にしない)
収穫後→(みんなが収穫できたことを喜ぶ)

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というように一人一人が大なり小なり思っていて、行動できたのです。

 

「何事も起こらない」って実は凄いこと

そこには、自分の感情を抑える、周りの状況を見る、うまくいかない場合に別の方法を考えるなど、情緒が不安定な子には、苦手なことがたくさんあるのです。

あるいは、言ってることの意味がわからない、大根の数が人より少ないと感じる、どうして目の前にあるものを今抜かないのか、など理解の困難さから収穫できないかもしれないという不安やイライラが募ったりします。

これらの問題に折り合いをつけて、何事もなかったかのようにさっと全員が抜けるようにしたのです。

子どもたちは本当に素晴らしかったです。