雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

人から「あなたが必要」と思われること

―それは、ある日の中休み。クラスで、ある事件が起きました。ジャム学級には、自由に使って良いパソコンが一台置いてあります。子どもたちは、パソコンに入っている学習ソフトを使って勉強しています。
「パソコン使わせて!」
「早い者勝ちやろ!」


今日は雨。みんな教室にいたこともあってか、どうやら、一台のパソコンを誰が使うかで揉めているのです。中休みは、少しもやもやした感じの時間になってしまいました。そして、中休み終了のチャイムがなりました。3時間目は、生活単元で、幼稚園に出かける時間です。幼稚園まで、とぼとぼと歩く道のり。子どもたちの気持ちを天気が表しているかのようでした。

 

しかし、そこはジャム学級。幼稚園に着くと、気持ちを切り替えて仕事を始めました。この日の最初の仕事は、教室の掃除。園児さんが、講堂で学習している間、空っぽになった教室を綺麗にするのです。その時間、わずか10分!しかし、雑巾の場所を教えてもらうとさっと取りかかり、終わってしまったので、廊下まで掃除していました。実は、教室を10分で掃除するなど、ジャム学級にとってはさほど難しい仕事では無いのです。

 

日頃の掃除では、「15分で教室2つと廊下を全て綺麗にする」を目標にして毎日頑張っているからです。縦割り清掃なので、通常級の子ともたちと協力してやっていますが、少ない人数で全員必死で掃除しています。膝をついて雑巾がけをするのも当たり前の作業です。ところが、幼稚園の子どもたちにとっては、それが職人芸なのです。学習を終えて講堂から帰ってきた園児が、ジャム学級の雑巾がけを見て、「凄い!」
「ありがとう!」
子どもたちから笑顔がこぼれ、一気に雰囲気が良くなりました。

 

「照る照る坊主を作るのを手伝ってくれますか。」
園の先生に頼まれた子どもたち。今まで、幼稚園では、畑の整備や掲示板制作、掃除など、環境整備の仕事をやっていたのですが、園児の補助ははじめてです。園児と一緒に教室に座って、緊張した面持ちで園の先生から照る照る坊主の作り方を聞きます。

 

用意された机は3台。グループは3つ。ジャム学級は5人。どう分かれて座ったらいい?子どもたちは、自分たちが固まらないように、考えながら座る場所をさがします。そして、工作がはじまりました。
始まって少しの間、子どもたちはどうしていいのか、様子を伺っているような感じでしたが、しばらくすると、園児達は、
「これやって」
「できん」
「これどうやると?」
などとジャム学級のお兄さんお姉さんに話しかけてきました。

 

こうなると、大忙し。でも、全てをやってあげるのではなく、園児ができるところはさせて、難しいところは補助するように考えてやっていました。そこには、日頃から教室で取り組んでいる子どもたちの『学び合い』の姿がありました。私は写真を撮りながら思わず泣きそうになりました。約束の時間が来たのですが、子どもたちの熱心な姿を見て、全員が完成するまで居残ってしまいました。
「ありがとうございました」
園児達からの感謝の言葉をもらい、学校へと帰る道。子どもたちの何とも言えない笑顔は、行き道のそれとは全く違うものでした。

 

教室に帰ってきました。時間が余ったので、子どもたちに休憩の時間も兼ねて、
「残りの時間は好きに使って良いよ。」
と言いました。すると、
「俺、iPadしよ。」
と、あえてパソコンに向かわないブド-くん。そして、
「10分ずつね。」
とタイマーをパソコンの前に置いて、順番に使おうとするレモくん。

 

パソコンは仲良く使いましょう、なんて言わなくても、子ども達はちゃんと考えていたのです。しかし、そう考えるきっかけを作ってくれたのは、園児達の感謝なのです。