雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

クラスだけが全員ではない

社会科見学の昼食。公園でのお話です。
この日は、とても好天に恵まれ、冬を忘れるような暖かい日でした。子どもたちの多くは、お弁当を食べ終わると、公園の遊具で遊び始めました。公園には、石造りのとても大きな滑り台がありました。滑り台を見つけると、子どもたちは、はしゃぎながら何度も滑り降りていました。その側に、女の子が一人で立っていました。3、4歳くらいの子で、お母さんと公園に遊びに来ていたようでした。昼食を食べる前、私は、子どもたちに話していました。「公園には、他の人たちも遊びに来ているので、自分たちだけで遊ぶことがないようにしましょう。」それを思い出したのか、ポツンと立っている女の子に気づいた男子がいました。(自分達が邪魔で、滑れなくて困っている。)おそらく、そう思ったのでしょう。その子は、女の子に話しかけると、滑り台の上に連れて行きました。「ちょっと、どいて!」「この子に滑らせてあげて!」滑り台の上では、何人かの子が、みんなに「滑り台を譲るように」と声をかけていました。それを聞いて、みんなは、女の子の場所を空けてくれました。そして、女の子が座って、めでたし、めでたし・・・、といきたかったのですが、女の子はなかなか滑り出しません。
「どうしたと?」
みんなが話しかけました。なんと、女の子は、みんなが邪魔で滑れなかったのではなくて、怖くて滑る勇気が無かったのです。おそらく、滑り台の上も、一人では怖くて登れなかったのでしょう。その時、偶然、子どもたちが女の子と一緒に上に登ってくれたので、勢いで行ってしまったのかもしれません。
女の子は、完全にガチガチになっていました。すると、
「じゃあ、お姉ちゃんと滑ろっか!」
「お兄ちゃんと滑ろうか!」
と言って、女の子を挟んで両側に子どもたちが座りました。
「よし、いくよ!」
「せーの」
女の子も覚悟を決めて、子どもたちと一緒に滑りました。砂場で尻餅をついてしまいましたが、なんとか滑り降りました。
「おおおー!」
「やったー!」
滑り台の周りから大きな拍手が起こりました。
「もう一回やる?」
すると、女の子はコクッと頷いて、また、一緒に上まで登りました。2回目も子どもたちと一緒に滑りました。すると、今度は見事に着地成功!
またもや大きな拍手が起こりました。
女の子は、完全にやる気スイッチがONになり、一人で滑り台の上に登り始めました。そして、それにあわせるように、子どもたちは、両側→片側→手つなぎと支えを少なくしていきました。そして・・・。ついに、一人で座りました。
「頑張れ!」
勢いよく滑り降り、砂場に着地すると、みんなからの拍手と歓声!女の子は、お母さんのもとに走って飛びつきました。
「もうすぐ、集合時刻です。元の場所に戻って整列します!」
みんなで、集合場所にもどろうとすると
「ありがとうございました!」
と、一部始終を陰で見守っていた女の子のお母さん。女の子が一人で滑れるようになって、本人もお母さんも嬉しそうでした。
「先生、これも『学び合い』ですよね?」
ジャム「できることを諦めなかったことが、素晴らしいね。」
女の子ができたことを、一緒に喜んでいる子どもたちが、少しお兄さんお姉さんに見えました。