雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング

雲外蒼天~特別支援教育とアクティブラーニング~

実践や経験をストーリーで語ってリフレクションし、自分の強みを探り、それと自分の考え方などを関連させながら次の一手を打つためのブログ

ワンピースのように

それは、ある日のかけ算の授業での出来事です。
 
 ある男の子が、算数のノートを忘れました。こういう時、誰かがノートを破って「はい、どうぞ。」と差し出してくれる子もいるのですが、この日は、そうはなりませんでした。本当は、先に「ノートを忘れたから紙をください。」とお願いすべきです。しかし、男の子は、その一言が友達にも先生にも言い出せません。今日は、かけ算の筆算のまとめで、練習問題をする日です。男の子は、しばらくして、
「二三が6、・・・・。」
ぶつぶつ九九を呟きはじめました。なんと頭の中で筆算をはじめたのです。とはいうものの、そう簡単にはいかないようで、私は(いつまで続けるのかなぁ)と思いながら見ていました。
 
 その隣で、熱心に問題を解いている女の子がいました。この子は、支援学級から交流で来ています。問題を解くときは、黙々と一人でやります。これまでの『学び合い』でも、自分から友達とかかわることは、あまりしませんでした。この二人、実は数日前の給食時間にあることで揉めて、その時に、女の子が「給食をクラスで食べたくない」という事態になっていたのです。
 
 女の子が問題を解いていると、ぶつぶつと隣から声が聞こえてきました。女の子は、その声に気付き、チラッと隣の男の子と机の上を見ました。そして、女の子は問題を解くのを止めすっと立ち上がり、男の子に側に行き、話しかけたのです。
「どうしたと?ノート無いと?」
「・・・。」
すると、女の子は、自分のノートの後ろのページをおもむろに破きはじめました。
「はい。」
破ったノートを男の子に差し出すと、男の子は、ぼそっと呟きました。
「・・・ありがと。」
 
 それから、男の子は水を得た魚のように勢いよく計算を始めました。二人とも問題に集中し、自分の世界に入っていました。女の子が先に解き終わると、答え合わせをするために前の方にやってきました。女の子が丸付けを終わり、自分の席に戻るとき、また、ちらっと男の子を見ました。そいて、立ち止まって一言
「ここ、3じゃない。」
「あっそうか。」
一言二言、言葉を交わすと、2人は、またしばらくそれぞれの世界に入り、問題を解き始めました。その後、2人はずっとこんな感じでかかわり、それぞれ黙々と問題を解きながら、時折、間違っている所の修正をしていました。
 
 教室の窓際では、女の子2人がホワイトボードを使って、問題を解いていました。一人は、インフルエンザで一週間休んでいた子。かけ算の筆算の仕方はなんとなくしか分かりませんでした。その子に、3桁の筆算の仕方をホワイトボードを使って教えようとしている女の子。しかし、桁の取り方が分からないと気づき、ボードに位取り表を書いて、
「一の位、十の位、百の位・・・」
と熱心に説明をしていました。
 
 また、教室の前方では、
「うーん、7の段と8の段がごっちゃになる」
という男の子。それを聞いて、九九カードをフラッシュカードの要領で見せながら、問題を出す女の子。テストまでには何とか覚えられるようにと頑張っていました。
 
 私は、教室を見渡し、子どもたちの姿を見ながらある漫画のようだと思いました。それは、「ワンピース」です。ワンピースの登場人物には、一人一人それぞれの目標があります。それぞれの目標を達成するために、同じ船に乗って仲間となり航海するのです。喧嘩をしたり、仲間に迷惑をかけたりしながらも、みんな仲間を信じて行動しています。
 
 うちのクラスもそんな感じになってきたと思います。テストで100点を目指す子もいれば、ちょっとでもできるようになりたいと願う子もいます。跳び箱を跳べるようになりたい子もいれば、給食の完食を目指す子もいます。忘れ物をしないように頑張る子もいれば、友達のために予習を頑張る子もいます。それぞれが自分の目標を達成するために行動しながら、みんなが仲間を信じて学び合える。そんなクラス、最高ですよね。きっとなれると思います。